10th ANNIVERSARY LIVE TOUR RADWIMPSの胎盤
10th ANNIVERSARY LIVE TOUR RADWIMPSの胎盤

2015/11/18(水) @Zepp Fukuoka
クリープハイプ / RADWIMPS
ライブレポート

 RADWIMPS対バンツアー、7夜目はZepp Fukuokaにて、クリープハイプを迎えて行われた。開演前から、紅潮した顔のお客さんが多く、会場にはうわずったような、火薬がチリチリするような空気が流れていた。

 会場が暗くなり、クリープハイプが登場すると大歓声が起こる。
 1曲目の「イノチミジカシコイセヨオトメ」が始まり、会場が揺れる。RADWIMPSのタオルを首にかけたファンも、ガンガン飛び跳ねていて、尋常ではなく床が揺れる。「手と手」「愛の標識」と演奏したあと、
「普段いろんなバンドと対バンしていて、負けたくないって気持ちもどこかであって、いつもは相手のことは言わないのだけど、今日は嬉しいので言います。呼んでくれてありがとうございます」
 そしてまた、会場が揺れる。
 ライブの中盤で披露された「オレンジ」。
「オレンジの光の先へ / その先へ」と観客が強く手を伸ばしている。手を伸ばしたら、クリープハイプの先にあるものに触れるかのように。
 ステージでのオレンジの光は一転青になり、「憂、燦々」が始まる。
 アップテンポの曲では、観客が縦に飛び跳ねるので床が揺れるのだが、このようなミディアムの曲では、1階アリーナの観客が前後左右にぐらんぐらんと揺れ続けている。
 みんなが一歩でも前で、尾崎の歌を聴こうとしている。真ん中に向かって全員が押し続けた結果、地震でプレートが跳ねるように、左右のどこかにチカラが分散して人波が崩れていく。研ぎ澄まされた緊張感のある演奏は、観客にそんな反応をさせていた。
 「RADWIMPSは、ずっと付き合ってて最近結婚したらしい彼女と、4枚目のアルバムをずっと聴いてました。残りの曲も、一生懸命やります」
 と、後半戦の「ウワノソラ」から「HE IS MINE」までの展開は、バンドが別な次元に入ったかのようなドライブ感に圧倒された。

 RADWIMPSのライブは壮絶なまでにグルーブをし続け、ツインドラムは、風神雷神のような凄みが出ていた。
 「クリープハイプ、出てくれてありがとう。あの曲が生で聴けてホントに嬉しかったです」と、野田のコメントが会場を沸かした。
「憂、燦々」を聴いて、「なんだ、この曲は!」と思ったそうだ。
 「デビュー10周年と言うことで、ツアーをやっています。こんなに長くやるとは思ってもいなかったけれど、昔から知っているとか、今日知ったとかは関係なくて、目の前にいるあなたのおかげで今もやれています。10周年と言っても、まだまだ3行目あたりのこの人生って思っています」
 「3行目あたりのこの人生」というコメントで、大きな歓声が起きる。
これは、11月25日発売の新曲「‘I’ Novel」の一節だ。この歓声は、対バンツアーが始まった頃には、なかったリアクションだ。リスナーのカラダの中に歌詞が染みわたっているのが感じられた。
 RADWIMPSの歌はいつもこうやって、リスナーのカラダの中で育ち、その人だけの歌になる。

 RADWIMPSとクリープハイプ。
 両者とも厳密に正確に、他者と1対1のコミュニケーションを追求し、それを表現してきた。
 その根幹にいる、野田洋次郎と、尾崎世界観。
 二人とも、とてつもなく誠実な人なんだと思った。
 自分が信じている相手に対して。それは、リスナーや目の前にいる観客に対してだ。
 二人は、自分が傷つこうが、何かを損なわれようが、そんなことはいとわずに、誠実に向き合おうとする。
 もっと楽で効率の良い方法も知っているし、それも出来るのだけれど、そうしようとしない。愚直なまでに、自分を届けることに日々の全てを使う。
 何故、二人がそうなったのかと、考えながらライブを観ていた。
 たぶん、彼らのありのままを、一滴でも多く吸収したくて、日々を使うファンがいるからだと思う。

 RADWIMPSの対バンツアーに出たあと、きのこ帝国の佐藤は、こう語っていた。
「RADWIMPSのお客さんは、暖かいですね。お客さんはバンドを映し出す鏡だと言うけれど、ホントなんですね。RADWIMPSのメンバーもお客さんも暖かくて、たくさん救ってもらいました」

 ハナレグミのライブでは、アンコールで登場した永積が、
「素晴らしいオーディエンスだよね。一緒に音楽を作ってんだなって、感動しました」と言っていた。

 RADWIMPSと観客は、10年かけてそういう関係性を作ってきた。
 それが手紙のように「‘I’ Novel」の歌詞に編み込まれている。

photo : 植本一子

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