ハナレグミとRADWIMPSは、全く違うライブをしたのだが、永積 崇と野田洋次郎は、同じオーラを放っていた。
柔らかく優しい包容力に、くるまれた夜だった。
「RADWIMPS、10周年おめでとう!」の第一声で、ハナレグミのライブは始まった。暖かい声が、ゆっくりと会場を満たしていく。歌が始まると、雲から漏れる陽光のように、声が観客を照らしているみたいだった。その瞬間に、今日が特別な夜になるのを感じた。
「洋次郎が、きのこ帝国と歌ってくれた曲をやります」
そんなひとことで歌われた「サヨナラCOLOR」、鮮やかなグルーブで歌われた「無印良人」、観客の誰もが、気持ちよさそうにカラダを揺らしている。
2階席ではビール片手の人も多く、笑顔がそこらじゅうに溢れていた。
「そろそろ、アイツらの足音が聞こえてくるよ」と、ハナレグミライブの最後に披露された「ハンキーパンキー」は、次のRADWIMPSに繋がる、まさにこの夜の「真ん中」になった曲だった。
「ハンキーパンキー 遊ぼうよ / ハンキーパンキー 出ておいで 」と語りかける声は、会場に染みわたりながらも、次に起こるライブを予感させていた。
歌の表現は、人間性と密接に関係している。大きな「器」に観客を包み、ハナレグミはステージを降りた。
「ハナレグミのライブで感極まって、もう今日は帰ろうって言ってた。出てくれてありがとう。2年くらい前から会うようになって、たくさん救って貰った。こんな先輩がいるなら、音楽を続けていられるって思えた」
RADWIMPSのライブが始まり、野田が言う。
「最後にやってくれたハンキーパンキーは、18歳くらいの時にすごく悲しい出来事があって、1日に100回くらい聴いてた。一緒にライブが出来てうれしくて、一生忘れられない」と語り、「ハンキーパンキー」をワンコーラス弾き語る。
そういう場面もありながらも、サポートドラマーの刄田綴色、森瑞希を迎えたツインドラムとのグルーブは、ますます凄みをましていた。RADWIMPSは、ツアー中にも恐ろしいスピードで進化していた。
変幻自在に繰り出されるジャムセッションは、燃えるように火花が散ったかと思うと、次の瞬間見事に抑制されて、曲に戻っていく。かつてロックバンドがいた「場所」を鮮やかに置き去りにして、違う次元に突入していた。
10年間。これが10年間の重みなのだろうか。と感じているさなかに、
「11月に出る新曲をやります」と演奏された 「 ‘I’ Novel 」では、その歩みが歌詞とともに伝えられた。是非、歌詞とともに聴いて欲しい曲だ。
アンコールでは野田がひとりで登場。
「ハナレグミとせっかくだから、アレしたいよね!」と、永積を呼び込む。
「素晴らしいオーディエンスだよね。一緒に音楽を作ってんだなって、感動しました」永積が笑う。
二人がギターを持ち、ハナレグミの「光と影」を歌う。
寄り添うように、絡み合うように、二人の声が上でハモったり、下でハモったり。こんな艶っぽいデュエットは、聴いたことがない。
「全員集合のやつ、やっちゃう?」と、次にRADWIMPSとハナレグミのバンドが呼び込まれる。
「スペシャルゲスト、クラムボンの原田郁子!」の声に、会場が揺れる。
野田が、ハナレグミの最新アルバム「What are you looking for」で書き下ろした曲「おあいこ」。
ステージ向かって右から、エレキギター、トロンボーン、パーカッション2名、キーボード2名、ピアノ、ボーカル、ドラム、ウッドベース、エレキベースと、総勢11人で演奏された曲は、魔法のようだった。
音楽ってすごい。そう思わせてくれた。
photo : 古溪 一道