10th ANNIVERSARY LIVE TOUR RADWIMPSの胎盤
10th ANNIVERSARY LIVE TOUR RADWIMPSの胎盤

2015/11/23(月・祝) @横浜アリーナ
Spitz / RADWIMPS
ライブレポート

 Spitzは本気だった。いや、毎回本気に違いないけども、10歳の誕生日当日の対バンに選ばれた意味やら想いの深さやらを受け取って、28歳のバンドは真っ向からかっさらいにきていた。どこまでも艶やかなオープニングナンバー「運命の人」でギュッと掴んだら、大人気がないとしか言いようのない最強のセットリストでグングン自分たち色に染め上げていく。20年以上前の名曲を当時より瑞々しいパフォーマンスで響かせる。かと思えば、「ラッドのリハも観れちゃったからね。羨ましいだろー?」なんて飄々とおどけてみせ、「人前で演奏するのは初めての曲を聴いてもらおうかな」という前フリのあとに渾身の「叫べ」をぶん投げる。敬意という最上の熱を帯びたカヴァーにフロアは歓喜し、圧倒され、横浜アリーナは一個の塊になった。エバーグリーンな音楽とは? 唯一無二なバンドとは? そして挑戦者とは? そのひとつの答えがこの日のSpitzだった。

 大先輩から重量級のお祝いを受けたRADWIMPSは、感謝と歓びと高揚感、その他モロモロを音楽に換えて爆発させていく。RADWIMPSの音楽は形成する粒子が細かいから聴き手の心にピタリと寄り添うのだと思っていたけれど、この日の彼らはもっとうんと強固で、なんなら1音1音から人型や体温まで伝わってくるくらい無骨なまでに誠実だった。その誠実な1音1音を2人のサポートドラマーを含む5人で強靭なアンサンブルへと昇華させていた。だから1フレーズ先の予測もつかないジェットコースターのような曲も、“ずいぶん長らく歩いてきたような”で始まる最新シングル「‘I’Novel」も、たったひとりのあなたのことを歌ったメジャーデビュー曲「25コ目の染色体」も、披露した全部の曲が10年という時間を歩んできた現在地であり、心からの“ありがとう”であり、“生き続けましょう”であり、“シアワセになれよ!”だった。

 前半抑えていたSpitz愛が「語りだしたらハンパないんですけど」という言葉とともに野田洋次郎から溢れ出す。帰国した小5以来ずっと聴いてきたこと。女の子に対するキモチなんて何もわからない時から、“愛してる”を歌っていたこと。だから自分の綴る“愛してる”や“好き”にはどうしたって何割かSpitzがいること。少し照れながら嬉しそうにそう語った1時間後、アンコールでSpitzのメンバーを迎え入れ、一緒に「スパイダー」を演奏する奇跡みたいな現実。しかも全員並ぶと、暴れん坊ドラマー、アクの強いギタリスト、バンドイチ踊るベーシスト、嘘のつけない不器用なヴォーカリストという構成が妙に重なって面白い。この状況を草野マサムネが「バンドもお客さんもすごい優しくて。法に触れない範囲で一番気持ちいい何かが入ってきているようだ」と言えば、野田洋次郎は「連鎖していくといいですね。誰かと10年後ここに立てたら」なんて未来にチラリと思いを馳せる。そして会場にいた全員が高額当選くじみたいなこのスペシャルな光景を胸に明日からの日々を過ごすのだ。

text by 山本祥子

Spitz photo : 上飯坂 一
RADWIMPS photo : 植本一子

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