10th ANNIVERSARY LIVE TOUR RADWIMPSの胎盤
10th ANNIVERSARY LIVE TOUR RADWIMPSの胎盤

2015/11/25(水) @横浜アリーナ
ONE OK ROCK / RADWIMPS
ライブレポート

 RADWIMPSの対バンツアー「10th ANNIVERSARY LIVE TOUR RADWIMPSの胎盤」。10公演目にして、満を持してRADWIMPSが盟友ONE OK ROCKを横浜アリーナに迎えた。

リスナーの誰もが「あるといいな」と思っていながら、「あったらヤバイ!できるわけない!」と心の中で半分諦めていた対バンが実現。既に旧知の仲であることは今年初頭にラジオでオンエアされたボーカル同士の対談や、個人のSNSでも明らかにされていたが、このような形で一夜限りの競演を果たすのはもちろん初めてのことだ。

 先攻はONE OK ROCK。もちろん、この出順も大方予想はできたものの、ビジョンに映し出された「ONE OK ROCK」の文字を前に、会場は割れんばかりの悲鳴にも近い歓声が飛び交った。
そして「今日は僕たちと皆さんでRADWIMPSというバンドを最高にお祝いしましょう」Takaの号令とともに、「Take me to the top」に流れ込む。海外でのライブも経てイベントなどを含む一時の凱旋となったこの日、盟友のアニバーサリーに駆けつけたとあって、Takaのシャウトもそれぞれのメンバーの音を鳴らす姿もいつも以上に激しく、気合いの表れを十二分に感じさせるのものであった。「とにかく今日僕らは前座です!最高のパフォーマンスやりたいと思います」その言葉に嘘偽りはなく、どこか鬼気迫る表情すら伺える。「RADWIMPSの対バンツアー、横浜アリーナ最終日に選んでくれてありがとう。同じバンドマンとして、10年止まらなかったことは素晴らしいし、これからも続いていくと思います。だからみなさんもしっかり彼らのことを応援してほしい」真っ直ぐな目でオーディエンスに語りかけた。

 ライブ中盤では「今まで1回もやったことない曲やります」と「Last Dance」を初披露。彼らの海外デビュー作として全編英語詞でコンパイルした『35xxxv Deluxe Edition』に収録されている新曲で、バラードでありながら、壮大なスケール感を放つこの曲は、アリーナの規模感でより一層輝きを放つのだ。
 もはやONE OK ROCKのワンマンライブに来たのでは・・・と、そんな錯覚に陥るほど、背景のビジョンも大胆に使いながら圧倒的なライブを繰り広げた。「The Beginning」「Mighty Long Fall」とヒット曲でも魅了し、「RADが好きですかー!RADを愛してますかー!」と、興奮気味なTakaの叫び声。そして、「完全感覚Dreamer」。静と動を織り交ぜながら、最高の仲間へのセットリストを惜しげもなく披露したのだった。そして、ONE OK ROCKの圧倒的なライブを受け、この3日間で初めて見せる緊張感あふれる面持ちでステージにRADWIMPSが立つ。

 「奇跡みたいなものが起こりそうな気がしてビンビンするのは俺だけかい?」
まるでお祭りでも始まるかのうような煽りで自分自身を追い込んでスタートさせた横浜3日目のステージ。
 ドラムの山口智史が休養中のため、これまでの対バンツアー各地同様にサポートドラマーに刄田綴色、森瑞希を迎えたツインドラムを要する5人編成が特徴だが、この編成はアリーナでは一際映える。中盤で披露された「ヒキコモリロリン」では、絶妙の距離感と音数のセッションで魅了。2台のドラムに挟まれて、センターでピアノを弾く洋次郎。その位置関係がしっかりと目に飛び込んでくる。今回のツアーは野田洋次郎のフロントマンとしての存在感、カリスマ性はもちろんだが、むしろ10年経って、自分たちの曲をどう聴かせ、どう表現するのか? にこだわりを持っていることがよくわかる。そんな音の中心にいる洋次郎が最も楽しそうだった。

 「ワンオクのライブ見て泣きそうになった。10年前にこんなに大勢の人の前で、アナタの前でライブするなんて、全く想像できなかった」と話す表情を見て、この日彼らがどこか自然体でいるようにも見えた。このONE OK ROCKとの対バンに身体をあずけているような。洋次郎がONE OK ROCKの「Wherever you are」弾き語って歌う姿もそうだった。

 ONE OK ROCKとの対バンのきっかけこそ、今回の“胎盤”ツアーのきっかけだったというエピソードも交え、(きっかけは昨年の夏、Takaが洋次郎を連れて針治療に行ったときの会話だとか・・・)ステージのボルテージも徐々に上がっていく。 リリースを迎えたシングル曲『 ‘I’ Novel 』では、1枚1枚ページをめくるように一冊の小説がビジョンに描かれ、そこにリリックが刻まれていった。
 終盤、「君と羊と青」でステージにいた5人の気合は最高潮に。「今日は宝クジにあたったようなもんでしょ?その運をつかいきってしまおうか? なんのわだかまりも残さず、最後まで暴れて帰ろうか?本気で言ってっからな!食らいついて帰れよ!」この言葉以上のステージからビシビシと伝わってくるエネルギーはオーディエンスにも伝わり、この3日で一番のうねりとなって会場全体を揺らしていた。
 「アナタがいてくれて今日が迎えられました。ありがとうございます。これからも変わらず音楽作っていくと思います。作っている自分が大好きだし、音楽の目を見て、1mmもブレることなく、音楽を作っていきます」感謝と決意に満ちた言葉で本編のステージを締めくくった。

 アンコールでは洋次郎が「本当は予定になかったけど、Takaが一生後悔するからやろうとなった」と、RADWIMPSのツアーTを着たTakaを呼び込み、『バイ・マイ・サイ』を洋次郎とふたりだけで披露する。ラジオの対談のときにTakaが好きな曲、として話していたこの曲。洋次郎がギターを弾き語り、2人の声が寄り添っていく姿、歌い終わってそっと握手を交わす姿・・・。それを一瞬たりとも見逃さないとステージを食い入る様に見つめるオーディエンスの姿がとても印象的な瞬間だった。  「もういっちょやっちゃう?あそこでうずうずしてるやつら呼んじゃおう」と、まるでドッチボールでもするかのうように、他のメンバーも呼び込むと、お互いがお互いのTシャツを身にまとったメンバーが姿を現す。「24時間テレビってこんな感じかね?これなら悪くねえな」と笑いも誘いつつRADWIMPSとONE OK ROCK、初めて全員が同じステージに立った。この胎盤ツアーではこれまでもコラボレーションはあったものの、アンコールの〆をコラボで終えたのはこれが始めて。2組がひとつになり、洋次郎、Takaが交互に歌う「有心論」。途中Takaが間違えてしまうようなアクシデントもありつつ(笑)再び、これまで以上の熱量で会場全体が揺れる。
 洋次郎とTakaがステージで肩を抱き合い歌う。武田とRyotaが供にサイドでベースを弾き、一方のサイドで桑原とToruがギターをかき鳴らした。そして2組を代表してドラムをTomoyaが叩く。
 夢のコラボレーションの大団円が終わると、ガッチリ抱き合い互いを称えあう7人。まるで白熱したスポーツのエンディングのような清々しさは見ているこちらを自然と笑顔にしてくれた。

 「25コ目の染色体」でデビューしてちょうど10年となる、横浜アリーナでの初日、RADWIMPSはSpitzを迎え、自分たちの夢を叶えた。
 2日目はいきものがかり。活動してきた場所も手法も違えど、キャリアを同じくして音楽を届け続けている2組はお互いの使命感を再認識させ、10周年の次の一歩を歩き始めた。
 そして、音楽の力を信じ、歩みを続ける盟友と音楽への愛を確かめた3日目。それぞれの対バンにより、会場の空気もまったく異なるライブを創り上げたRADWIMPS。彼らがまた次のステージにしっかり歩みを始めたことを確信させる3日間となった。

text by FM802 (ROCK KIDS 802) 今江元紀

ONE OK ROCK photo : 橋本 塁
RADWIMPS photo : 植本一子

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