『あいたい』

今日で、東日本大震災から丸10年が経ちました。
 今年も曲を作りました。『あいたい』という楽曲です。あの震災のことを想い、離れ離れになったいくつもの気持ちを思い描きながら出てきた言葉は、期せずしてこのコロナ禍を生きる僕たちにも通じる想いとなりました。

 被災した方、大事な人を亡くされた方、生活が一変した方々にとって10年というのはただの記号にすぎないと思います。直接被災することのなかった僕ら自身、あの震災とどう向き合ったらいいのだろうかという葛藤の10年でもありました。その中で唯一できることである音楽を毎年、勝手ながら発信させてもらってきました。
「この10年間どんな想いで毎年楽曲を発表され続けてきたのですか」
 一つの節目を前にこのような質問をされることが増えてきました。そのたびになぜだろうと自問しますが、一向にわかりません。あの大きすぎる経験を忘れたくないから、風化させたくないから、被災した方々に少しでも寄り添っていたいから、いつかまたやってくる大震災に少しでも備えるきっかけとなってほしいから、ただ自分で自分を満足させたいから。どれも正解なようで、どれも的外れな気がしてきます。
人が誰かを好きになるのに理由はありません。後からいくらでもそれらしい言葉は並べられるけど、それらはあくまで後付けのもののような気がします。理由や理屈から離れたところで人の根っこというのは動くのだと思います。
 この10年間の楽曲というのは僕にとってラブレターのようなものだったのかもしれません。返事のこない、一方的に書いたラブレター。毎年3.11が近づくと僕はなぜだか無意識にギターやピアノに向かい、あの日を、被災した人々や土地を想い、歌詞を書き、メンバーやスタッフや島田さんに声をかけ、楽曲にしてきました。ある時は悲しみ、ある時は慈しみ、ある時は苛立ちや絶望に感情が振られたこともありました。でも良いも悪いも、人間はずっと同じ感情ではいられません。その仕組みを最大限生かして、未来になんとか希望を繋げて生きていきたいと強く願っています。
 この新型コロナウィルス、COVID-19をくぐり抜けた先にはどんな未来が待っているのでしょう。大震災と同様に、大きな困難は時に人々の間に軋轢や摩擦、歪みを生み出します。時に分断や対立が生まれ、僕たち人間の本性があぶり出されることがあります。世界全体が、少しずつギシギシと音を立てて傾いていくように感じてなりません。こういう時だからこそ、手を取り合って生きていきたいです。

 今回、毎年3月11日に発表してきた楽曲に「あいたい」「かくれんぼ」の2曲を加えた10曲を一つのアルバムにまとめました。この楽曲たちを聞き返しながら改めてこの10年という歳月を振り返る作業にもなりました。僕はあの日から今日まで、ちゃんと生きてこられたのだろうか。僕自身が今日まで生き続けるに値することを、どれだけできただろうか。答えのない自問自答を繰り返します。きっとこれからも、答えのない「途中」を、もがきながらその時々の答えを出しながら生きていくんだと思います。
 これを聴いてくださる人たちにとってもこれまでの歳月を振り返り、そして未来を考え、ほんの少しでも希望を抱けるきっかけとなるアルバムだったら幸いです。

 最後に、東日本大震災で亡くなられたすべての命に、被災したすべての方々に、合掌。

洋次郎

※なお、このアルバムの利益は日本赤十字社、自治体などに全額寄付され、日本全国で起こる自然災害などの支援活動に充てられます。(2021年12月31日までの売上金額が寄付の対象となります)

あいたい/RADWIMPSオフィシャルYouTube 

あいたい Lyrics(歌詞)
Japanese
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かくれんぼ Lyrics(歌詞)
Japanese
English

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02:03

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ゆーき

佳子さん、満を辞しての渡米はすごいいい思い出になってますね。すごいパワフルなお婆ちゃん。 この記事を読んで、近々自分のお婆ちゃんに会いに行こうと思いました。 10年以上前からRADが好きで、RADの曲を聴いていたら、周りの大切な人を大切にしようという気になります。優しくなります。背中を押してくれます。 洋次郎、いつもありがとう。(10コ下ですが呼び捨てごめんなさい) 佳子さん、ゆっくりお休みください。合掌。

toraki02

「あいたい」聴きました。 隣りに居てくれたらな、 と思ったら涙が出てきました。 想いは風化することなく、まだ在る。 とっておきの言葉が名前が 私たちには必要で、その言葉や名前を言う度に 色んな感情になった。 それでも会いたいし、触れたいし、愛したいんだと 私たちは痛感するのです。 『ラブレターのようなものだったのかもしれません。 返事のこない、一方的に書いたラブレター。』 この文章が気になります。 私も誰かもきっとずっとラブレターを書いている。 そんな気持ちに共感しました。 あの日を想って話すこと、伝えること、大切について語ることは、 全て誰かに向けたラブレターの様な気がします。 私も被災者。 でも、私は“あの時を知っている者”が良いんです。 洋次郎さんと同じ様に。

かすみ

やさしい音 ありがとう 癒やされます

今日CDが家に届きました。 大学の頃、東日本大震災に関わりのあるボランティアをしてました。ボランティアを始めた時点ですでに震災から3年が経っていましたが、離れた地でも時が経っても震災の渦中にある方々がたくさんいることを知りました。 少しでも多くの方々が少しでも毎日を穏やかに過ごせていることを祈っています。 

クサノリカ

 この10年、正直、大人の私たちは震災の話をしないようにしてきたし、触れないようにしてきたところがあります。子供たちには被災地を背負わせたくないとも思ってきました。もちろん、それぞれの心の中には常にあの日があったし、大切な人がいたし、3月11日が近づけば涙が出て仕方がなかったりしましたが。でも、なるべく普通に暮らしたかったのです。 当時、3歳だった娘が10Years10Songsを聴いて、あまりない地震当日の記憶をポツポツと話すようになりました。今、子供たちが私たちに代わって、震災の話を受け継ごうとしています。完全に自主的にです。被災地を背負わせたくはないと思いつつ、こんな姿が頼もしくもあります。そんな彼等らの背中を押してくれてるのが、RADWIMPSの音楽だったりします。大切な人を大切と想うきっかけをいただいているような気がします。 RADの皆さま、ラブレターをありがとう。 いつか、返事を受け取りに東北にいらしてください。 長々と失礼しました。

カオリ

RADWIMPSさま。島田さん。スタッフの皆さま。 ラブレター、毎年ちゃんと届いてました。受けとってました。 10通まとま読むのはまだしんどいけど、大切にします。

thanks

もふ

RADWINPSさんが3.11に寄せた楽曲を毎年配信されていることを、今日知りました。今日、その曲たちを聴き、そこから溢れている想いに身をゆだねることに意味があるのかな、と思ってすべて聴きました。 幼かった私は、震災当時の記憶があまりありません。あれから10年が経った今、あの時のことを知る方法は沢山あります。でも、強い感情やショックを直接受け取ることを恐れる自分がいました。 私なりの方法でいい。10年前の今日、そして今日までの10年間を想って涙を流すこと。RADWINPSさんと沢山の存在の音・言葉・色・空気・風…みんなが私の背中を押してくれました。みんなのおかげで、少しではあるかもしれないけど、みんなの想いの中に自分も溶け合うことができました。 当たり前の幸せに気付かずに、向き合うことから逃げていた私。つらい思いをしている人に直接寄り添うことはできないかもしれない。でも、RADWINPSさんの曲たちのように、私も間接的に誰かの心に寄り添えるような存在でいたい。間接的に誰かの心にそっと寄り添えるような何かをこの世界に生み出したい。掴み所があるようでないような世界で、どんな風に届いたのか不安になるけど。それでも私はこの世界で生きるんだ、という確信がある。 優しい色合いの、RADWINPSさんの曲が好きです。私の気持ちに気付かせてくれてありがとう。そしてたくさんの想いたちと私を繋げてくれてありがとう。いつか私から生まれ出たものが、巡り巡ってみなさんの心に届きますように。今は、目の前の幸せを大切に掬い取っていきますね。

至時

10年、どんなに月日が経っても忘れられないし 忘れちゃいけない。 これまでも、これからもRADWIMPSと共に

あむ

会いたいです。

春菊

ありがとう。

そらな

震災から10年。2012年から曲をアップしてくれてた年月を思い出します。今でも最初に聴いた白日は忘れられません。震災された方達のことを思うと涙が止まりませんでした。岡山に住んでいた私はただただ思うしかなく、何もできない自分が嫌で、2012年に夜行バスでボランティアに行きました。あの時の光景はいつでも思い出します。これが忘れちゃいけないことなんだなって実感しました。 毎年出された曲達に、降りかかる苦しみ、悲しみ、喜びなど沢山の感情がありました。聴くと、思い出してしまうけど、それが忘れないにも繋がるんだなって思います。 この10年届けてくれて本当にありがとうございました。 わたしは洋次郎が歌う音楽がRADWIMPSが大好きです。今の私がいるのもRADWIMPSのおかげです。これからも看護師の仕事を頑張っていきたいです。そしてまた、東北に行って今の形を見にいきたいと思ってます。 本当にありがとう。 ずっと大事にします。

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